物価と賃金の好循環とは言うが

 高市首相が誕生してから株価は大きく値を上げていますが、片や相変わらず値上げラッシュで庶民の暮らしは一向に良くならないのが日本経済。それに対して物価と賃金の好循環で景気を良くしようというのが前政権から方針ですが、それで本当に景気は良くなるのでしょうか。

 物価と賃金の好循環という政策によって経済を活性化して、デフレからの脱却を図ろうというのが前政権からの政府方針ですが、最近の物価上昇率は政府目標の2%を超えた水準で推移しており、物価上昇に賃金の上昇が追い付いていないのが現状のようです。つまり、実質賃金はマイナスということですね。

 マクロ経済学の観点からすると、今の日本の現状を好転させるには正しい経済政策なのかもしれませんが、これだけ毎月物価が上がると庶民の暮らしは楽になるどころか、ますます厳しくなっていくのではないかと思ってしまいます。お米の値段も安くなったかと思えば、最近はまた驚くような値段がついていたりするのをスーパーに店頭で見かけます。

 物価と賃金の好循環を企業目線で見ると、賃上げの原資を稼ぐために製品価格を上げている、ということもあるようですね。今は円安で原油や輸入品の価格が高いとか、トランプ関税だとか、物流業界の人手不足とか、外的要因で原価が上昇しているのかもしれませんが、資材価格や物流コストが落ち着いたときには物価と賃金の好循環ということを考えると、やはり賃金上昇分を価格に上乗せすることになってしまうでしょう。

 しかし、そんなことが出来るのは大企業だけではないでしょうか。下請け仕事が多い中小企業では、賃金上昇分を価格に転嫁するためには、発注先との交渉をしなければならず、要望を100%認めてもらうのはなかなか難しいことです。中小企業庁では、3月と9月を価格交渉促進月間として、下請け企業(今後は受注企業と呼ぶことになりました)が発注企業と値上げ交渉を行いやすくする施策を行っており、交渉の実施率は高くなっているようですが、価格改定額は全体の平均で52.4%と半分程度にとどまっています。中には全く値上げに応じてもらえない企業も15.8%あったそうです。こうなると中小企業における賃上げ率も次第に息切れしてきて大企業の差がますます広がっていくのではないかと心配になります。

 人件費上昇分を価格転嫁できない企業としては、内部の生産性を高めることに注力するのが常套手段ですね。そもそも、労働分配率を高めるのは生産性の改善部分からだと思いますので、生産性を高めることは本来の意味で賃金上昇の原資となってしかるべきものです。逆に言えば、生産性を高めることが出来るかどうかが、中小企業の存亡にかかっている、ということも言えそうです。