ロジカルシンキングでスキルアップ

 改善活動においても、通常の業務においても、物事の捉え方というのはとても重要です。何か課題があったとして、その課題が過去にあった事例に似ているので、あっ、それはこうすればいいんだ!とすぐに結論を出してしまうことがありますが、それが落とし穴になることがあります。 

 課題に向き合ったときに、すぐに答えを出してしまうケースは様々あります。過去に同じような課題を解決した経験がある場合や、思い付きで答えを出してしまう場合、さらに解決策になるかどうかわからないけど取り敢えずやってみよう、ということも多いのではないでしょうか。

 その結果、うまく行かなかったり、当初は解決したように見えても時間と共にうまく行かないことが出てきてしまうものです。このような状態を「解決策に飛びつく」と言って、改善手法に則らないダメなケースの代表例です。

 課題には様々なものがあり、一つのやり方ですべて解決できるものではないのですが、解決策を見出して決定するまでの考え方は共通です。その代表格がロジカルシンキングと言われる思考法で、物事に対して筋道を立てて考え、結論を導き出す手法です。その過程で、最適な解を選び出し、ネガティブな副作用がないか検証し、後戻りしない解決策かどうかなどを考えます。そして、その思考をサポートする各種のフレームワークがあり、それらを使うことでロジカルシンキングのやり方が身についてくるのです。例えばロジックツリーとか、ピラミッドストラクチャーとか、MECEなどが有名ですね。

 また、ロジカルな考え方で解決策を示すことが出来れば、関係者に対しても納得性のある説明が出来るようになります。そして、上司から高い評価が得られるかも。。。

改善手法の重要性

 企業では日々改善活動が行われていますが、改善したつもりでもいつの間にか元に戻ったり、別なところで不都合が起きたり、改善した代わりに工数が増えたりすることもあります。そうならないためには、正しい改善手法にのっとって行うことが大切です。

 改善は企業内のいたるところに求められています。製造業であれば工程改善で生産性や品質の向上を目指しますし、設計部門ではプロセスの改善や性能改善で完成度の高い製品を生み出すことが求められます。間接部門でも生産性や業務の質の改善を行っているのではないでしょうか。しかし、それらの改善はを行う上で、二つのことに気を付けなければなりません。

 一つは改善が定着して元に戻らないようにすること。改善をしたつもりでも、いつの間にか元に戻ってしまう場合が多くあります。長年やりなれたことを変えるのは難しい場合もありますし、改善の内容自体は正しいけれど、やりにくさや工数が掛かるなど、マイナス面が後から出てきてしまうことがあります。

 二つ目は部分的な改善にとどまっている場合です。これには二つあって、個人的な活動によって改善が個人の中だけで終わっている場合と、自分の業務範囲や自部門の担当業務のみ考慮して関連部署のことが考慮されない場合があります。

 せっかく改善を行ってもこのようなことになっては結局は成果が出ず、時間の無駄で終わってしまい、自己満足のみ残ることにあります。あるいは、改善したと上司に報告して、良い評価を得ようということもあるかもしれませんね。そうならないためには、改善を進める手順を明確に決めて、それに則って行うことで確実に改善の成果を得ることが出来るのです。

 例えば、QCサークルの活動では、QC7つ道具というツールを使うことになっていますが、それはまさに改善の手順を決めていることに他なりません。その改善の手順も決まったものがあるわけではありませんが、どの手法も基本は同じですので、企業の実情に合わせた手法を決めて進めることが良いと思っています。

業務改善と基幹システム

 企業の成長と共に使用している基幹システムが実際の業務に合わなくなってきているケースが増えているように感じます。あるいは、企業がDX化を進めるにあたり、既存の基幹システムでは対応できない場合も多いのではないでしょうか。

 2025年の崖という危機がかつては盛んに語られていましたが、今まさにその2025年で、その終わりに近づいて来ていて、実際にその崖っぷちに立たされている企業もあるようです。危機の一つは古いシステムではメインフレームと言われていたコンピュータの保守切れという物理的な要因がありますが、ハード面でまだ使えるものであっても使用されている言語がCOBOLだったりすると、プログラムを理解できるエンジニアがいなくなっていることもあります。

 別の要因では、エンジニアの絶対数の不足とか、システムの中身を理解しているエンジニアが高齢化で退職してしまうということもあります。また、システムも長く使っていると、当初のシステムにアドオンで機能追加したり変更修正を繰り返したりして、ソフトが迷路のようになっているケースも考えられます。

 更に、企業としてDX化に取り組むのが当たり前に様な状況になっていている中で、企業の求める機能に対して既存のシステムでは対応できないことや、大幅な改修が必要になるケースもあります。改修費用は一概には言えませんが億単位になることもあるのではないでしょううか。そうなると中小企業にとっては極めて大きな投資案件になりますが、それだけ投資して本当に効果が出るのか不安になります。

 その不安に対しての答えは、まずは業務の見直しを行うべきだ、ということです。システムを更新して業務を改善しようとするのではなく、業務の改善を行い、それをシステム化するという基本に忠実にあるべきです。別な見方をすれば、それは現場目線で考えるべきということです。トップダウンでシステムを更新して業務効率化を図ろうと考える前に、先ずはこのことを十分に理解することが必要だと思います。

中小企業が賃上げ原資を生む方法

~ 補助金や価格転嫁に頼らず業務改善・原価改善を利益につなげる実践ガイド ~

序章:はじめに


「賃上げしたい気持ちはある。でも、原資がない」――これは多くの中小企業経営者が抱える共通の悩みです。
長い間低く抑えられてきた給与水準が、政府の「物価と賃金の好循環」という政策とも相俟って、2024年度から賃上げ率が5%前後になる賃金上昇時代となりました。
中小企業での賃上げ結果は大企業よりも低くなっていますが、中小企業も人材確保のためには世間並みの賃上げをしたいところであっても、それだけの余裕がないというのが多くの中小企業の状況であり、賃上げ原資の捻出に苦慮している企業は多くあります。
何とか世間並みの賃上げを実現している中小企業でも、実際には賃上げを行う十分な余裕がなく、利益を削っていたり、補助金や価格転嫁で乗り切っていたりしているようですが、それでは継続的な賃金上昇へ対応は難しく、いずれ行き詰ってしまうことが懸念されます。
賃上げの原資を確保すべく、売上増を図るとか、事業拡大を目指すとかの方策を考えたとしても、それらはすぐに結果が出るものでもなく、逆にその前提として何らかの投資が必要となることで経営に対するリスクも生じますし、人材不足に悩む企業もあるでしょう。
しかし、賃上げ原資は“売上を伸ばさなければ生まれないもの”ではありません。業務改善や原価改善によって、今ある経営資源を最大限利用して原資を捻出することも十分に可能です。
本記事では、中小企業の現場目線で、賃上げ原資を生み出すための業務改善・原価改善の考え方と進め方を、実例を交えながらわかりやすく解説します。

第1章:なぜ中小企業では賃上げ原資が生まれにくいのか


多くの中小企業経営者が「賃上げはしたいが原資がない」と感じる背景には、いくつか共通した構造的な問題があります。これは経営努力が足りないという話ではなく、経営の見え方そのものに原因があるケースが大半です。


1-1:売上拡大頼みの経営が限界を迎える理由


賃上げ原資を考えるとき、経営上の要因として多いのが、「賃上げ=売上を伸ばさなければ無理」という思い込みです。確かに売上が伸びれば利益は増えやすくなりますが、現実には次のような壁にぶつかります。
• 営業活動へ振り向ける人材不足で受注を増やせない
• 売上を伸ばしても残業や外注が増え利益が残らない
• 競争が激しく、価格改定や値上げを行うのが難しい
『ある製造業(従業員30名規模)では、3年間で売上は約1.3倍に伸びていましたが、営業利益はほぼ横ばいでした。それは、売上増を図るための人員や設備の増強で経費が増えたために利益率が悪化していたためで、現場では「仕事は増えたのに給料は上がらない」という不満が溜まり、結果として人が定着しない状態に陥っていました。』
これはあるニュース記事の抜粋ですが、これでは経営側も働く従業員の側も、何のための一生懸命努力しているのか分からなくなってしまいます。このように、売上拡大だけを追い続ける経営は、賃上げ原資を生みにくい構造になりがちです。言葉は悪いですが、「貧乏暇なし状態」と言えるでしょう。

1-2:利益構造を把握できていない企業が多い現実


もう一つの経営上の大きな要因が、「どこで利益が出ていて、どこで失われているのか」が見えていないことです。
やみくもに売上げを伸ばしても利益が付いてこない状況は、利益率が低い商品ばかりが売り上げを伸ばしていて、トータルで見ると利益率が下がっていたりします。
その理由は、
• 部門別・工程別の採算が分からない
• 間接業務の工数が数字で把握されていない
• 原価がどこまで下げられる余地があるのか不明確
その結果、
「なんとなく厳しい」 「たぶん余裕がない」 「忙しいけど利益が出ていない」など、感覚論で会社業績を評価して、賃上げの判断してしまいます。
しかし実際には、後で触れるように賃上げ原資は“見えていないだけで存在している”ケースも少なくありません。
問題は「お金がないこと」よりも、「どこに賃上げ原資を生む余地があるのか分からないこと」なのです。

第2章:賃上げ原資の正体は「利益」ではなく「ムダの削減」


多くの経営書やネット上の情報では「賃上げの原資=利益」と説明されます。そのことは間違いではありませんが、利益を増やすために値上げや売上増が必要というだけでなく、それを行う前に中小企業で重要なことは、ムダを減らすことです。
きわめて単純な企業の状況を示す計算式は、
   利益=売上-経費
です。この式で明らかなように、賃上げ原資となる利益を増やすには売上を増やすか、経費を下げるかの二通りあるのです。しかし、売上を増やすために経費が増えてしまえば利益は増えないことになります。それ故に、まずは、この経費を下げることを考えるべきなのです。
つまり、賃上げ原資はこの「経費」の中にこそあるということです。

2-1:賃上げ原資=営業利益ではない


賃上げ原資となる「利益」というと、決算書の営業利益や経常利益の数値を思い浮かべがちですが、現状の決算書の数字から賃上げ原資を割り当てようと考えると厳しい状況が見えてしまうのではないでしょうか。
仮に今期の決算で経常利益がカツカツの状況だとすると、来期の賃上げは無理だと思ってしまうかもしれません。経営としては、賃上げをしたが故に赤字転落となる、という状況は避けたいと思うでしょうが、一方で賃上げ率ゼロでは従業員は会社を離れて行ってしまうかもしれません。
しかし、仮に現状では余裕ある利益が生み出されていなくとも、賃上げの原資は様々な部署での、様々な業務の生産性向上=コスト削減から生み出される、というのが理想形です。
製造業の場合、実際には、次のような形で賃上げ原資が生み出されるケースがほとんどです。
• 部材、原材料の購入コスト削減
• 残業時間の削減による人件費圧縮
• 外注・再作業の減少によるキャッシュ流出防止
• 間接業務の効率化による人員余力の創出
サービス業などの場合には、業務効率の改善が生産性向上となり同じ投入工数で売り上げを維持できれば、そこに賃上げ原資が生まれのです。
『ある企業の間接部門(従業員20名)では、業務フローを見直した結果、月50時間分の残業が削減されました。年間に換算すると約100万円以上のコスト削減となり、そのままベースアップ原資の一部とすることができました。』
このように、賃上げ原資は「新しく稼ぐお金」ではなく、「無意識に漏れ出ていたお金」から生まれることが多いのです。

2-2:キャッシュを生む改善と、生まない改善の違い


賃上げ原資は様々な改善による生産性向上によって生み出される、というが再認識されたと思いますが、それを先ほどの式に含めると、
  利益=売上-(経費-生産性改善分)
と表すことが出来ます。
そこで、生産性改善を進めようと、様々な改善を実施しようと思われるでしょうが、ここで注意したいのは、すべての改善が賃上げ原資につながるわけではない点です。

* キャッシュを生まない改善:
 ・書類フォーマットを整えたが作業量は変わらない
 ・会議を減らしたが残業が減らない
*キャッシュを生む改善:
 ・作業時間が実際に減る
 ・外注、残業、手待ち、ミス、不良廃棄が減る
改善活動を実施して生産性を高めようとしても、その活動自体が工数ですから、うまく進めなければ生産性を悪化させる結果にならないとも限りません。
改善活動は「やった感」で終わらせず、この改善でどれだけの時間(=お金)が浮いたのかを意識することで、初めて賃上げにつながる改善となり、それによって賃上げの経営判断が可能になります。
このことは、経営側だけの判断ではなく、改善活動を行う従業員との間でも共通の認識を持つことが重要となります。
次章では、こうしたムダを具体的にどう見つけ、業務改善として形にしていくかを解説します。

第3章:業務改善で賃上げ原資を生み出す具体策


業務改善という言葉から、「システム導入」や「ITツール活用」などを想像する方も多いかもしれません。しかし中小企業で成果につながる業務改善の多くは、日常業務の中に埋もれたムダを減らすことから始まります。

3-1:間接業務のムダ(待ち・探し・二度手間・重複)を見える化する
賃上げ原資を生みやすいのは、実は現場作業よりも間接業務です。

  • 書類を探す時間
  • 承認待ちで手が止まる時間
  • 同じ内容を何度も入力・転記する作業
  • 複数の部署で同じことをやっている業務
    これらは一つひとつのことは小さく見えますが、積み重なると大きなコストになります。
    『ある製造業の生産管理部門では、受注〜手配までの事務作業を見直ししたところ、1件あたり約5分のムダが発生していました。月800件の受注があったため、単純計算で月60時間以上が間接業務のムダに費やされていたことになります。』
    業務改善の第一歩は、「頑張り」ではなく、どこで時間が失われているかを見える化することです。製造の現場では、常に改善や効率化を追求する企業文化が根付いている企業が多いと思いますが、間接部門は業務が肥大化しやすく、しかも無駄が見えにくい部署なのです。

3-2:DXは目的ではなく手段(中小企業向けの現実解)


DXという言葉が世の中に浸透し、中小企業でも何らかのDX策を実施しなければならないと考えている企業も多いのではないでしょうか。時代に取り残されまいとITツール導入ありきのDX策を推し進めると失敗しやすいのが実情です。
DX策がうまく行っていない企業は、

  • ・高価なシステムを入れたが使いこなせない
  • ・現場の業務フローが整理されないままIT化した

一方で成果が出ている企業は、
1) 業務を紙やExcelを使って整理する
2) ムダな業務や多くの工数が掛かっている業務を明確化する
3) 効率化につながる部分のみをIT化する
という順序を踏んでいます。
『ある製造業では、情報の軸となる部品表を見直したところ、各部署でオリジナルのものに必要な情報を付け加えてExcelで管理していたため、情報の更新時には多くの工数が発生していただけでなく、問題も発生していました。そこで、全社で使えるITツールを導入した結果、情報の一元管理による業務の効率化で工数削減と業務品質の向上が図られ、更にその先の計画では原価管理と統合して管理業務の効率化だけでなく原価の見える化など業務の質を高めようとしています。』
このようにムダな部分や工数の多く掛かっている部分を明確にし、それらを改善し、効率化を図ることを目的として、その目的を実現する手段としてITツールを導入するのが改善のセオリーです。
更に、導入したITツールを活用して、業務の質を一段高めることが真の意味でのDX化であり、ツールさえ導入すればDX化できると考えるのは無理があります。

3-3:人を増やさず生産性を上げた改善事例


業務改善の本来の目的は「楽をすること」ではなく、同じ人数でより付加価値の高い仕事をすることです。目先の目標としては残業削減などの経費削減効果を狙うことになるでしょうが、それを継続的な改善につなげていくことで、新たな価値を生む体制にしなければなりません。そのためには、

  • 人を増やさずに回る仕組みを作る
  • 浮いた時間を改善・育成・顧客対応に使う
  • 改善マインドが社員に定着し、継続的な改善が行なわれる
    この循環ができると、継続的な生産性改善が進み、賃上げも一時的なものではなく、継続可能な施策になります。ここで重要なことは、この生産性改善の循環を社員全員の共通マインドにすることです。それは例えて言えば、社員が常に無駄はないかと考えて行動するような状態です。
    『ある電気部品の製造業では、生産品目が多いことから、製品の仕様をコード化して顧客が必要な部品を発注しやすくしていましたが、工場サイドではコード化された受注品を必要な工程に区分けが必要で、ベテラン社員がいくつかのパターンに分けてリスト化していましたが、それでもすべてをカバーするには不十分で部外者には分かりにくいものでした。その部分を整理し、生産管理システムと連携することで受注から工程計画までつなげることが出来、0.5人月の工数が浮きました。その工数を在庫管理や棚卸業務改善に充てています。』
    良くある改善事例ではありますが、浮いた工数でできていなかった業務に対応させることで、全体として見て効率化が実現できています。何らかのシステムや新たな仕組みを導入するからには、その期待される改善効果を金額で表し、それを実現させるような動きが必要でしょう。

第4章:原価改善で利益体質に変える考え方


原価改善というと、「仕入先への値下げ要求」を思い浮かべがちですが、それだけでは長続きしません。重要なのは、原価の構造を見える化し、それぞれの費目のコストを把握することが必要です。

4-1:原価=材料費だけではない


製造業においては、原材料費が原価の中で占める比率が最も多いと思いますが、生産に関わる加工費がその次に大きいのではないでしょうか。先ずは、その加工費の中で無駄になっているコストを把握するところから始めるのが良いでしょう。なぜならば、それは自社の努力だけで対応できることですので。例えば、以下のような点を見直します。

  • 段取り替え・手戻りによる作業ロス
  • 不良・やり直しにかかる時間と材料
  • 少量多品種による非効率
    製造業では原材料費が売り上げの50%程度になりますので、不良率が1%下がっただけで、売上の0.5%分の改善効果となります。数字にすると小さく見えても、売り上げ規模10億円であれば数百万円の改善となり、それは確実にキャッシュを生む改善です。
    その他、稼働率についても設備稼働率だけでなく、価値稼働率といった無駄な部分を加味した数値で管理することで、無駄な部分が見え、生産性改善につながります。

4-2:固定費に手を付けない限り賃上げは続かない


製品原価には販売管理費や間接費も含まれますので、その部分の見直しも必須です。前章でも触れましたが、間接部門のムダは見えにくいので、コストを下げるのは難しさが伴います。しかし、この部分に触れない限り、継続的に利益を生み出すことは難しくなります。別な言い方をすれば、経営のスリム化という言葉が当てはまるでしょう。

  • 間接部門の工数がブラックボックス
  • 使われていない設備・システム
    固定費は触りづらい分、改善できれば効果は長期間続きます。賃上げを「一度きり」にしないためには、避けて通れないポイントです。

4-3:現場を疲弊させない原価改善の進め方


原価改善で最も避けたいのは、現場への過度な負担です。タダでさえ忙しいのに、改善活動までさせるのか、というような現場からの反発を招いては決してうまく行きません。

  • 「もっと早くやれ」「もっと削れ」という号令型改善
  • 数字だけを追い、現場の納得感がない改善
  • 改善の成果は出ているはずなのに原価は一向に下がらない
    成功している企業では、
  • 改善活動の成果が見える形で示される
  • 業務のムダが減って楽になった実感がある
  • 部門間で競うように改善活動が行われている
    という実感を現場が持った活動になっています。

第5章:改善を賃上げにつなげるための経営の工夫


様々な改善活動によって成果が出たとすると、それらをすべて賃上げに回すことにはいかないというのが経営です。設備の更新や先行投資も必要ですし、営業力や開発力の強化などにもお金を回さなければいけません。そのような状況の中で賃上げの原資を確保するための経営的な面での工夫も必要となります。

5-1:改善効果を「賃上げ原資」として見える化する


改善活動は漫然と行うのではなく、明確な目標を設定して、それを達成する過程も管理することが重要です。部署ごとの改善や製品ごとの改善もあるでしょうし、プロジェクト的に行う場合もあります。それぞれの活動で、目標と活動計画を作成して、その進捗を管理できる体制を構築することが、改善活動を成功に導くポイントです。

5-2:社員にどう説明し、どう納得感をつくるか


経営の数値を社員に完全にオープンにすることをためらう企業もあるでしょうし、数値を示しても理解できるとは限りません。むしろ、数値でごまかされていると感じる社員もいるはずです。社員に理解してもらうためには、まず、会社としてどのような施策を行っているかということを社員共通の理解とすることです。
その上で改善活動の実績や売り上げなど、分かりやすい数値を示し、会社の状況を感覚的に理解してもらうことが必要です。中小企業では、会社のお金の状況を社長と経理担当者だけが分かっているという状況もあるでしょうが、それはある意味でブラックボックスですので、不信感も生まれやすいものです。

終章:まとめ|賃上げ原資は“外”ではなく“内”にある


ここまで述べてきましたように、どの企業でも社内には様々なムダが潜んでいます。賃上げの原資を生み出すには、まず社内にある資源を見直すところから始めるべきなのです。
そして、社員の理解を得られる形での改善活動は社内の一体感を醸成するチャンスでもありますし、価格改定を発注元と交渉する時にも社内のムダを改善した結果も含めて説明することで、説得力も増すことになります。
一方で、改善をすればその分、納入価格の引き下げ要求が来ることもあります。そういうケースでは、発注元も巻き込んだ活動にするか、改善の取り分をあらかじめ決めておくなどの対応を取ることで防げます。
業務改善、原価改善はなかなか教科書通りにはいかないもので、それぞれの企業の実情に合わせた対応が求められます。そのためには、現場に密着した経営がなにより重要となります。

*業務改善、原価改善の余地がどのくらいあるかのチェックリストがあります
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